任意後見契約・任意後見監督人とは?制度のデメリット・メリットを事例で解説!
本コラムで分かること
昨今の日本では、少子化と高齢化が同時に進む少子高齢化社会となっています。
平均寿命も年々伸びてきており、高齢者のおひとり様・おふたり様世帯が増加しております。高齢になると認知症や障害などにより判断能力が低下することも少なくありません。皆さんもそんな不安を抱えていらっしゃいませんか。
本コラムでは、そんな不安を抱えている方のための制度『任意後見制度』についてご説明していきます。
任意後見制度の仕組み・任意後見でできること
任意後見制度は、判断能力が低下する前に、誰に後見人になってもらうか、何をしてもらうか決めておくものです。
任意後見でできることは、財産管理(不動産、預貯金、金融資産等)、各種支払い・収入の管理、契約行為(不動産売買、施設入所、介護サービス、入院等)、ご本人がしてしまった不要な契約の解除、などです。
実際の任意後見契約書とは?※実際の書式は事務所のものを利用
契約にあたって、最低限記載すべき項目は以下のようなものがあります。
・契約の開始時期
・委任契約の範囲
・報酬・事務所経費等の費用
・証書等の保管
・契約の終了
・代理権の目録
任意後見契約によって委任できる一般的な事項として、以下のようなものがあります。
1:財産の保存や管理
2:預貯金の預け入れ・払出
3:定期的な収入・支出の管理
4:生活費の送金、生活に必要な財産の購入
5:居住用不動産の修繕
6:保険の契約に関すること
7:介護保険やその他の福祉サービスの利用契約
8:公的介護保険の要介護認定の申請
9:医療契約や入院契約
10:相続人となった場合の承認・放棄など
また、任意後見が発効する前や死後についても備えたい場合は、以下のような事項も追加しておくと安心です。
・見守契約:支援者が定期的に本人とコンタクトを取る
・財産管理等委任契約:後見状態になる前からも、支援者に財産管理の対応をして貰える。
・死後事務委任契約:葬儀・埋葬・医療費の支払等、ご逝去後の事務について契約を締結しておく。
尚、任意後見制度では委任できないものは、財産の運用、ペットの世話などがあります。
任意後見監督人とは?監督人報酬はかかる?
任意後見監督人とは
任意後見契約の効力を生かす際に選任される者です。契約で定められた任意後見人を監督する立場になります。
監督人には、候補者として親族を推薦することも可能ですが、原則、専門職(弁護士や司法書士)が選任されます。最終的な判断は家庭裁判所が下します。
任意後見人が契約書に基づいて適正に業務を行っているかを、定期的な財産目録及び業務報告書を提出してもらうことで確認をします。それを踏まえ、監督人として裁判所へ報告を行うことになります。
監督人の報酬
後見監督人の報酬は、家庭裁判所へ報酬付与申立を行うことで発生し、ご本人の預金から受領することになります。金額は、ご本人の財産状況や業務内容に沿って裁判所が定めます。
任意後見制度のデメリット・注意すべきトラブル事例
デメリット
任意後見には下記のようなデメリットもありますので、利用を検討する際には司法書士など専門家に一度ご相談されることをおすすめします。
①取り消し権が認められていない。
②本人の死亡と同時に契約が終了する。
③契約を開始するには家庭裁判所への申立てが必要。
④手間やコストがかかる。
トラブル事例
実際に当事務所でも、このようなトラブルのご相談を受けることがあります。
①任意後見受任者に申立ての義務がないため、申立されない限り効力は発生しない。判断能力が低下している状況でも申立てされない可能性もある。
②効力発生前であれば、相手の同意がなくてもいつでも解除する事ができる。解除されても専門家に文書作成を依頼している場合の費用・報酬は返金されない。
このようなトラブルを起こさないためには・・・
・本当に信頼できる人や法人との契約を締結する。
・自分より年齢が下の人と契約する。
・後見人の第2候補を考えておくなど、契約を解除される可能性を下げておく。
など、危うい契約のままで急いで進めてしまったり、将来のリスクを検討しないまま進めてしまったりしないよう、しっかりとライフプランを設計したうえで任意後見契約を行うことがとても重要です。
任意後見制度のメリット・実際の活用事例
メリット
任意後見はあまり知られていない制度ですが、条件が当てはまる方には、安心・柔軟・余計なコストがかからない制度として、とても有効です。
①今現在の自分の意思で自由に後見人を選べる
②依頼したい支援内容を自由に設計できる
③契約内容が登記されるので、任意後見人の地位が公的に証明される
④家庭裁判所で任意後見監督人が選出されるので、任意後見人の業務をチェックしてくれる安心がある。
任意後見を活用した事例①
一人暮らしで、ご主人は亡くなり、お子さんはおらず、兄弟はいるも、高齢でその子供たちとの付き合いもあまりない方の事例です。
現在はお元気ですが、自宅の土地・建物、預貯金の管理など、今後の事が心配になって相談におこしになりました。
任意後見契約を締結し、財産の管理と身上監護(介護契約や医療契約、施設への入所に関する事など)に関する事などを契約で取り決めました。
高齢の方にとっての「いつ何があるか分からない」という心配に備える事ができ、安心して日々を過ごされています。
任意後見を活用した事例②
ご両親は他界、兄弟・配偶者・子どもはおらず、一人暮らしの方の事例です。
数年前に体調を崩してから、任意後見人を従妹へお願いしていらっしゃいました。ところが、施設入所した後に従妹と仲違いをしてしまい、財産管理にも不安を覚えた為、自らの意思で任意後見人を解除しました。
その後、改めて専門職(司法書士等)へ任意後見人を依頼し、財産管理等委任契約も結び、現在と将来の不安を解消することができました。
このように任意後見は「ご本人の意思能力」がしっかりした段階であれば自由に契約の解除や締結をおこなうことができます。
本コラムのまとめ
ここまで『任意後見制度』について、デメリット・メリット、実際の事例をまじえてご説明してきましたがいかがでしたしょうか。大切な財産や権利を守るための制度であることが少しはお分かりいただけたかと思います。
制度についてご不明な点がございましたら当事務所までご相談くださいませ。司法書士が丁寧にご説明いたします。