【決定版】遺言書の書き方講座|初めて遺言書を書く方必見、遺言書のすべてお見せします
亡くなった人の財産をめぐり遺族間で泥沼の争いが発生するのは必ずしもドラマの中だけに限りません。
裁判所の発行する司法統計によると、令和元年の一年間で家庭裁判所に持ち込まれた相続事件は12,783件にも上ります。
そんな家庭内での争いを防ぐ手立てとして最も簡単であり安価なものとして皆さんが思い浮かべるのは「遺言書」なのではないでしょうか?
しかし、一口に「遺言書を書く」と言っても「遺言で何ができるの?」「遺言の書き方なんて知らない!」「遺言を書く際の注意点は?」と様々な疑問があるかと思います。
そこで、本ページではプロの目線から遺言書(自筆証書遺言)の書き方を徹底解剖!
遺言書のひな形から詳細な書き方、書く際の注意点まで皆様の不安や疑問を解決する1ページとなっていますので是非参考にしてみてください!
遺言書でできる生前対策
まず「遺言書って何ができるの?」という疑問にお答えしていこうかと思います。
主に遺言にかけることは以下の四つになります。
できること①誰に相続するかを決める
遺言書を用いることで誰に相続するかを指定することができます。
法定相続人にあたる親族以外にも、生前お世話になった人や遺産を分け与えたい第三者を相続人として指定することもできます。
また、家庭事情や個人的な事情により遺産を相続させたくない人がいる場合には指定した相続人から相続権を剝奪することもできます。
できること②相続分を指定する
指定した相続人ごとに相続する遺産の割合を指定することもできます。
法定相続人の相続割合については「法定相続分」として民法の中で相続割合が規定されていますが、遺言書に「相続人甲に〇割の遺産を、相続人甲に△割の遺産を相続する」というように分配割合を指定することで、法定相続分と異なる割合で相続を行うことができます。
できること③遺産ごとに相続人を指定する
相続する遺産の種類が多岐にわたる場合、単純に「誰に何割を相続する」という形では正確に遺産を分割できない場合があります。
特に、不動産、株式、債権、預貯金、その他動産といった遺産が混在する場合には、被相続人の死後に相続人間の話し合いで分割する際に困難が伴う場合があります。
混乱を防ぐために、「相続人甲に不動産を、相続人乙には株式を相続する」とように相続させる遺産をあらかじめ遺言書に書いておくことでスムーズな相続を実現することができます。
できること④遺言執行者を指定する
遺言書に書かれた内容を実行するために指定するのが遺言執行者になります。
遺言書により指定された遺言執行者には、民法の規定により相続を行う際に必要となる一切の行為を行う権限が付与されます。
遺言書により法定相続人以外の第三者に寄贈を行う場合、遺言書の存在を隠匿されないか心配な場合、というように遺言書に則った相続の執行に不安がある際には遺言執行者を選定しておくことにより迅速かつ希望通りの相続を行うことができるようになります。
以上が遺言書を書くことによって達成できる代表的なものになります。
上記の項目以外にも、「生命保険の保険金の受取人を変更する」「婚外子を認知する」といったこともできます。
ご自身の理想的な相続を遺言で実現できるか知りたい場合はまずは専門家へのご相談をおすすめします。
ここまで遺言書の効果について解説させていただきました。ここからは、遺言の書き方を解説していきます。
遺言書の書き方
遺言書(自筆証書遺言)を書く際に必ず書かなくてはならない項目は以下になります。
中には記載がない場合トラブルに発展しかねないだけでなく、遺言書そのものが無効になってしまう必須記載事項もありますので確実に確認して遺言書を書きましょう。
①遺言者本人が自筆で書く
遺言書は財産目録以外すべて遺言者が書く必要があります。
偽造や改変の可能性を防ぐためにも、容易に損傷する材質の紙やシャーペン・摩擦で消えるインクを用いたボールペン等の使用は避けることが望ましいでしょう。
※2019年の「自筆証書遺言の方式緩和」により2019年1月13日より財産目録のみ手書きでなくパソコンで作成してよいというルールの緩和がありました。
②財産目録を作成する
相続する財産に関して「何が・どれくらい」あるのかを正確に遺言書に書いておく必要があります。
基本的に遺言書を用いて相続を行う場合、その財産目録にしたがって遺産分割が行われることになります。その際に記載漏れがあった場合、せっかく遺言書を作成したにもかかわらず遺族間での遺産相続トラブルに発展してしまう可能性もあります。
こうした悲劇を防ぐためにも遺産目録は正確に作成することをお薦めしています。
③相続財産ごとの相続人を正確に記載する
財産目録によって、「何が・どれだけ」あるのかは記載できました。次に大事になってくるのが「誰が・何を・どれだけ」相続するのかという点です。
遺言書を読んだ人が、誰が相続するのか、どの財産をどれだけ相続するのかを正確に把握できるように詳細に記載する必要があります。
例えば「相続人甲と相続人乙で預貯金2,000万円を折半する」と曖昧に記載するのではなく、「相続人甲にはA銀行の定期預金500万円分とB銀行の普通預金のうち500万円を、相続人乙にはB銀行の普通預金の内1,000万円を相続する」というように細かく正確に記載する
ことで理想通りの遺産分割を達成できます。
④日付を明記する
遺言書を書いた日付を年月日で記載する必要があります。
書式に指定はありませんが、第三者が見た場合でも正確に把握できるように、20○○年○○月○○、または令和○○年○○月○○日という形で記載しましょう。
日付がない場合、遺言書が無効になりますので注意してください。なお、複数の遺言書が存在する場合には、最新の日付のものが有効になります。
⑤署名する
遺言書には、必ず本人が自筆で署名を行わなければいけません。
これは配偶者や親族であっても代理を行うことはできませんので注意してください。
なお、自筆の署名がない場合は遺言書が無効になってしまうので必ず署名を書きましょう。
⑥捺印する
捺印がない場合も遺言書が無効になりますので必ず捺印しましょう。
なお、捺印は実印が良いとされていますが、認印または拇印でも認められます。トラブルを避けたいという場合には実印が最も確実ですので、迷った場合は実印を用いることをお薦めしています。
また、遺言書が複数枚にわたる場合には偽造の疑いを避けるためにも、あらかじめ契印(割印)を押しておくことがのぞましいでしょう。
以上が遺言書の詳しい書き方になります。上記の点を満たしていれば基本的には法的な有効性を持った遺言書を作成することができます。
上記の流れに沿って書いたもののまだ不安が残る、自身の状況が複雑で上記にない条項を書き足したい等、自筆の遺言書でご自身の望む相続の実現ができるのか知りたい場合は、専門家に一度相談してみることをおすすめします。
遺言書に関する注意事項
遺言書の書き方を理解したところで、ここでは基本的な書き方以外の注意事項をいくつか紹介します。
思わぬ落とし穴も潜んでいるので必ず確認しておきましょう!
遺言書の紛失に注意する
遺言書を書いた後はその遺言書を紛失しないように細心の注意を払う必要があります。遺族が遺言書を見つけられない、遺族が遺言書を隠匿してしまう、といった理由から遺産創造紛争に発展する可能性もあります。
そんな心配を解決する策として、2020年の民法改正に際し法務局による自筆証書遺言保管制度が始まりました。これは公的機関である法務局が個人の自筆証書遺言(遺言書のこと)を相続が開始するまで預かっていてくれるという制度になります。
自筆証書遺言保管制度について、詳しくはこちらのページをご覧ください>>
いくつかの手続きと手数料の支払いが必要ですが、こちらの制度を使用することで遺言書に関連する相続トラブルを未然に防ぐことが可能になります。
複数名での遺言書の作成はできない
遺言書は、民法第九百七十五条(協同遺言の禁止)より「遺言は、二人以上の者が同一の証書ですることができない。」と定められています。
このため、配偶者と連名での遺言書を作成することはできません。もし連名で遺言書を作成したとしても法的な効力を持たないものとなってしまいますので、遺言書を書く際は必ず一名の名前のみを残すようにしましょう。
また、同様に特定の第三者との連名もできません。
法的に効力を持つ遺言書を書く
「遺言書の書き方」の章でも書きましたが、遺言書の捺印や署名はそれがないだけで遺言書の法的効力を失ってしまうほどに大事な要素です。こうした大切な要素の抜け漏れは必ずないように確認を行いましょう。
また遺言書に書く文言に関して、法的に無効になる、相続の際に曖昧さが残りトラブルに発展するということのないように注意しましょう。
最後に
今回はプロの士業資格者の目線から、初めて遺言書を書く人に向けて自筆の遺言書の書き方をひな形から必要事項、書く際の注意点と細かく解説してまいりました。
このページで学ぶことである程度自身をもって遺言書を書くことができたのではないでしょうか?みなさんの遺言書作成の一助になれていれば幸いです。
一方で、当事務所では遺言書の作成や執行に関するご相談も数多く寄せていただいております。
・自筆で遺言書を作成したが法的に十分なものなのか不安である。
・遺言執行者に誰を指定すればいいのかわからない。
・死後の相続税申告のことまで対策しておきたい。
こうした遺言や相続に関する不安・悩みをお持ちの方、近くにお住みの方はぜひ私共、司法書士法人 小関資産管理綜合事務所にご相談ください。
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